Aiba, I., Yamagishi, A. 2025. "Urbanization without Industrialization: Evidence from US Bases in Okinawa" NEW
ヨーロッパ、アメリカ、東アジアなどの歴史をふまえて、都市化は産業(製造業発展とともに起こるものだと伝統的に考えられてきました。しかし近年、インドや中東諸国などの途上国を中心に製造業の発展を伴わずレストランなどのサービス業などが伸びる「消費都市」の発展がよく観察されるようになっています。いったい何がこのような「消費都市」の形成をもたらすのでしょうか?また、「消費都市」の発展は良いことなのでしょうか?
本論文では、沖縄の経済発展の歴史に着目してこの問いに答えます。第二次世界大戦での沖縄戦により米軍に占領された沖縄では、米軍が多くの基地を建設し、最盛期では沖縄本島の面積の2割以上が基地となっていました。経済的なインパクトも大きく、例えば1960年時点だと、沖縄全体の所得のうち約4割が米軍基地由来のもの(米軍基地の財消費、沖縄人雇用による給与支払い、米軍基地への地代支払い)でした。このような外国からの大量の所得流入が、消費都市の形成の重要な要因であることを論じています。
本分析のために、戦前から現代までを網羅する沖縄の市町村レベルの人口、雇用、米軍基地などに関するデータを新たに整備しました。その上で、まずは回帰分析などの手法を用いて 沖縄返還直前の1970時点だと(1) 米軍基地がある市町村の人口密度が、米軍基地が所在しない市町村より顕著に高い (2) 米軍基地がある市町村ではサービス業雇用シェアが高く農業雇用シェアが低いが、製造業雇用シェアとの関連はほぼゼロ、であることを示しました。上述の「消費都市」が米軍基地の周りで発達した可能性を示唆しています。
さらに「消費都市」の形成において米軍から流入した所得が重要であること、および「消費都市」の望ましさを考察するために定量空間経済モデルを構築しました。ベーシックなこの手のモデルに、新たに米軍基地(=外部からの所得を用いて財を消費し、人を雇用し、地代を支払う施設)を導入したことが最大の特徴です。米軍基地以外にも、例えば大学や空港など、同様の特徴がある大型公共施設の分析にも使える汎用的なモデルになっています。
こちらのモデルのパラメーターを1970年の沖縄経済の実態に合うように設定し、そのうえで「もし米軍基地から流入する所得がゼロだったら、沖縄経済がどうなるか?」をシミュレーションしました。つまり、米軍基地が一切レストランでの食事のような消費をせず、沖縄人を一切雇わず、地代も一切支払わなかったらどうなるか?ということです。分析の結果、米軍基地回りでは人口(密度)が大きく減少しました。都市化の度合いが大きく下がるということになります。また、米軍基地回りでのサービス業の雇用シェアは大きく減少、農業の雇用シェアは大きく上昇する一方、製造業の雇用シェアには特に大きな影響がないという結果になりました(ただし、島全体で見ると製造業の雇用シェアの増加も見て取れます)。これにより沖縄の総所得(GDPのようなもの)は27%減少し、厚生は17%下がるという結果になりました。消費都市の形成は例えば製造業の生産性向上を妨げ、むしろ有害という議論(「オランダ病」)があるのですが、この可能性にもかかわらず米軍基地由来の消費都市の形成は所得と厚生上昇に有用との結果になりました。
本研究は東京大学経済学研究科特任助教の相場郁人さんとの共同研究です。
Inoue, S., Weinstein, D. E., Yamagishi, A. 2025. "Martyrs, Morale, and Militarism: The Political Impact of Devastation and Slaughter" NEW
戦争の経験によって、戦後の政治が大きく影響されたと思われる例は枚挙に暇がありません。例えば第一次大戦後のドイツでは、屈辱的な敗戦の経験がその後のナチスの台頭を導いたと言われていますし、ベトナム戦争後のアメリカの敗北もその後の軍事的な政策に大きな影響を与えたとされています。しかし、ある研究では戦争の経験は後に軍事を重視するタカ派的な政治を導くとされる一方、ほかの研究では真逆にハト派的な政治を導くとされており、戦争が果たして戦後軍事主義的なタカ派的態度をもたらすのか、それとも軍事的手法を否定し戦争を極力忌避するハト派的態度をもたらすのかは未解決の問題です。
本研究では、日本の第二次世界大戦敗戦の経験が戦後の政治にいかなる影響をもたらしたかを調べました。タカ派的態度の代理変数として、野党と比べて憲法9条の改正に歴史的に積極的であったり、軍事力(自衛隊)の充実にも賛成してきた自民党への投票率を用いています。本論文の最も重要なポイントは、一口に「敗戦の経験」といっても、それが軍人への被害なのか民間人への被害なのかでその後の政治に与える影響が全く異なることです。具体的には、軍人への被害状況として兵隊世代の女性比率(戦死者が多ければ多いほど、兵隊はほぼみな男性なので男女比が上がる。Asai and Kambayashi 2023)、民間人への被害状況として人口あたりの空襲による建物破壊を取っています。どちらの戦争被害も都市ごとに大きな差があったことを利用して、差の差法に基づく回帰分析を行うと、軍人への被害が大きいほど自民得票率が上がる一方、民間人への被害が大きいほど自民得票率が下がるという結果になりました。様々なメカニズムが考えられますが、例えば身近な家族や友人が戦死した場合は軍隊の存在を肯定したうえで次回の戦争では負けないように(復讐できるように)軍備増強を考えるようになる一方、自分が悲惨な戦争被害を目の当たりにした場合は戦争という概念そのものを忌避するようになり、軍備増強反対のハト派的態度をとるようになるなどが考えられます。あくまで日本の事例ではありますが、「戦争が政治に与える影響を考えるには、戦争経験が民間人への被害なのか軍人への被害なのかによってまったく逆の結論になりうる」という点は日本以外でも妥当する可能性が高いと思われますし、従来の研究では戦争の政治への影響についてまったく逆の結果が出てきていたことへの1つの説明にもなりえます。
この戦死と空襲の効果は戦後すぐだけでなく、戦後80年近く経過した現代でも(戦後すぐの時期よりも弱くなったものの)残存しています。その意味で、第二次世界大戦が日本の戦後政治を形作ってきた要因の1つと言えそうです。しかも、我々の回帰分析結果に基づいた簡単な選挙結果のシミュレーションによると、もしも空襲がなかったら1960年衆議院選挙で自民党が改憲に必要な2/3の議席を確保していた可能性が示唆されます。憲法問題が戦後80年ずっと議論に上り続けてきた要因の1つとして、二次大戦があるのかもしれません。
本論文はコロンビア大学経済学博士課程の井上静さん、および同大学のDavid Weinstein教授との共同研究です。
Goto, T., Yamagishi, A. 2024. "Wage Spillovers across Sectors: Evidence from a Localized Public-Sector Wage Cut " (産業間の賃金波及効果について:地域別公務員賃金削減からのエビデンス)
この研究は2000年代の日本の公務員制度改革と世代別の公民セクター間の労働移動の差を利用して、公務員の賃金が地域の民間賃金や社会厚生に与える影響を調べた研究です。千葉大学の後藤剛志さんとの共同研究です。(以下、後藤さんの論文紹介の転載です)
日本では1990年代以降、諸外国と比較して賃金水準が停滞しており、賃金水準を政策的にあげることが政策課題となっています。近年、最低賃金や医療機関での賃上げが他業種の賃上げに繋がることが明らかになっており、OECD平均で全雇用の18%を占める公務員セクターでの賃上げが民間セクターでの賃上げに結びつくのであれば、公務員賃金を政策的に賃上げを促す手段として考えることができるかもしれません。
そこで2006-2010年に行われた公務員改革により、地域ごとで公務員賃金が変化したことを利用して、公務員賃金が民間賃金に与える影響について調べました。この改革では、公務員のベース賃金が全国一律で4.8%減少した一方、物価水準の高い地域には新たに地域手当が支給されたため、地域手当支給地域では改革前と賃金がほとんど変わらない一方で、非支給地域では改革前に比べ公務員賃金が4.8%下がるという状況になりました。もし、地域手当非支給地域で改革後に民間賃金が下がっていれば、公務員賃金が下がった影響が反映されていると考えることができます。
また、公務員賃金から民間賃金への波及経路には「公務員賃金水準に負けないように民間企業が賃金水準を上げる」というような公民間の人材獲得競争のようなものが考えられますが、これは公民間で人材が流動的に移動している状況がなければ成立しません。日本の多くの公務員には30代までの入職制限があり、地方公務員の離職率が30-50代は20代の半分以下となっていることから、公民間の人材移動の流動性が20代以下では高い一方、30代以上では著しく低いことがわかります。そのため、公務員賃金から民間賃金への波及があるとすれば、20代以下の民間賃金で観察がされると考えられます。
2と3の内容を踏まえると、①公務員のベース賃金が下がった地域手当非支給地域における、②20代以下の民間企業従業員のみ、公務員賃金低下の影響を受けたと考えられるので、改革前後の①と②に当てはまる人たちに着目して調べれば、「公務員→民間」の因果効果を取り出せます。公務員のベース賃金は毎年、民間賃金を参照して決められるため、「民間→公務員」という逆の因果関係も気になるところですが、この逆の因果関係は①と②とは関係なくどの公務員・民間企業従業員にも適用されるものなので、①と②に当てはまる人の賃金のみに観察される変動は「民間→公務員」という逆の因果関係による影響を受けたとは考えづらいものになります。
本研究では、これらを踏まえ、公務員改革で1%の公務員賃金低下につき、民間賃金が約0.3%減少したことを明らかにしました。また、人口当たりの公務員比率が高い地域や20代以下の公務員の離職者を多く受け入れている産業ほど、この影響が大きいことも分析から明らかになりました。これらの結果は、公的セクターの規模や公民間の人材流動が、公務員賃金から民間賃金への波及効果に大きな影響を与えている可能性を示唆しています。
さらに、本研究では、公務員賃金の1%の減少がその地域の20代以下の人口を約0.4%減少させるということも明らかにしました。労働者にとって、賃金水準が低下した地域に比べて賃金水準が高い地域のほうが魅力的であることを考えると、この結果は公務員賃金が下がった地域の魅力度(=その地域で得られる効用)の低下を示唆しています。他にも、公務員賃金が減少した地域では、地価の減少や若年者の失業率増加も観察されたことから、公務員賃金の減少がその地域の経済に多方面での影響をもたらしたことがわかります。
この研究からは、公務員賃金の変化が民間賃金や若年者を中心として地域社会に大きな影響を与えることがわかりました。実際に、分析結果に基づいた試算からは、2006-2010年の公務員賃金の減少によって公務員賃金の減少額以上に民間賃金や地価の減少といった悪影響が出たことも明らかとなっています。そのため、これらを踏まえると、公務員賃金を一定程度上昇させることが、民間賃金の増加や地域社会の厚生増大に繋がると考えられます。
Takeda, K., Yamagishi, A. 2023. "The Economic Dynamics of City Structure: Evidence from Hiroshima's Recovery" (都市構造の経済動学:広島の復興の経験からわかること)
戦争、自然災害、パンデミック、産業の栄枯盛衰、特定地域の振興政策…などなど、都市の構造(=人口や雇用などの都市内での分布のありかた)というのは様々な事件にさらされてきました。都市の構造というのはこうした事件によってどれだけ変化するのでしょうか、あるいは様々なことが起こっても案外変化しないものなのでしょうか?また、もし変化しないとしたらそれはなぜなのでしょうか?例えば戦争や災害のあとの復興政策を考えたり、長期的な経済不況にあえぐ地区をどう振興するか等を考えたりする上で、こうした都市構造の変化に関する理解は必要不可欠です。
この論文では、「何か大きな事件があっても都市構造はあまり変化しないのか」、「都市構造があまり変化しないのはなぜなのか」を広島への原爆投下の事例を用いて、理論、実証の両面から分析しています。広島の原爆は当時の市の中心部に落とされ、半径2キロ圏内でおびただしい犠牲者を出すとともに建物をほぼすべて破壊しました。一方、爆心地からある程度離れたエリアでは建物が完全に破壊されることはなく、大量の避難者が流入することでむしろ市の周縁部の人口が爆増することとなります。すなわち、都市の「単一都心構造=真ん中が一番栄えている状況」が逆転し、周縁部が一番栄えていて都心は灰燼に帰した状況となりました。ですので、戦後の広島では周縁部が比較的栄えていて(旧)中心地は廃れてしまうという可能性は十分にありえたと思われます。しかし、実際には数年が経つと破壊された中心地の人口は再び増加して中心地としての地位を回復し、戦前のような単一都心構造に帰することとなります。なぜこのような劇的な復興が起こったのでしょうか?
私たちはまず、広島市内の人口や雇用の分布を町丁目レベルで戦前から戦後にかけて分析できるデータを様々な歴史資料の収集とデジタル化を行うことで整備しました。次に、広島の破壊された中心地はわずか5年で相当程度の復興を成し遂げ、再び都市の中心となったことを回帰分析等の手法で厳密に示しました。さらになぜ中心地が復興したのかを検討するために、「中心地はもともと有利な立地条件にあった可能性」を検討しました。もし中心地が地形の面や交通アクセスの面などで周縁部よりも大きく優れていれば、みなすぐにでも中心地に戻りたいはずなので復興が実現しそうです。しかし、こうした立地条件の変数を色々と統御してもなお、中心地の復興はほとんど説明できませんでした。となると、中心部の復興には2つの可能性が考えられます。1つ目の可能性は、(さまざまな立地条件をあの手この手で考慮したけれども、)データで観測可能するのがどうしても難しい何らかの中心地の立地条件の良さがやはりあって、それが鍵となって復興が引き起こされた可能性です。もう1つの可能性は、「集積の経済」と呼ばれるものによって中心地が復興した可能性が挙げられます。みんなで集まって働くことで生産性が向上したり、みんなで集まって住むことで買い物環境が良くなるなど、人々が集まることによって生まれる地域の魅力のことを集積の経済と呼びます。もし原爆が落ちたにも関わらず、人々が中心地の復興がなされると信じていて近々また中心地の人口、雇用密度が高くなることを予想していれば、集積の経済によって中心地にみんなが戻ってきて、結果として本当に復興が起こってしまうのです。この「集積の経済」は、なぜ経済活動が特定の場所に集中するのかを説明しうる都市・空間経済学における最も重要な概念の1つです。
では以上のような広島の中心部の復興の背景にある2つの可能性のうち、どちらがよりもっともらしいのでしょうか?この分析のために、私たちは「定量的空間均衡モデル」と呼ばれるクラスの理論モデルを構築したうえで、このモデルが戦後広島に関するデータに沿うようにモデルのパラメーターを推定しました。この理論モデルがきちんと中心地の復興を予測できるかテストしたところ、きちんと復興を予測できたので広島の都市の在り方をきちんと捉えたモデルであるといえます。モデルのパラメーターの値を見てみると集積の経済は重要で、人口密度が上がると居住地としての魅力度が上がり、雇用密度が上がると勤務地としての魅力度(=賃金など)が上昇します。実際、このモデルにおいて集積の経済は復興を説明するためのカギであり、実際にもし集積の経済がなかったとすると中心地の復興が予測されなくなることがわかりました。すなわち、私たちの理論モデルにおいては、中心地に再び住んで働くという人々の行動は集積の経済によって動機づけられていたことを示しています。また、集積の経済が大事ということは「もし人々が中心地が復興できると思えなかった場合は、中心地に人が戻ってこない」こともありえます。実際、私たちのモデルでは戦前以来の中心地が復興せず、別の場所に都市の中心が移る均衡もあることがわかりました。すなわち、「(あれだけの被害を受けたにも関わらず)原爆が落ちた中心地の復興を人々が信じることができた」からこそ、広島の中心部が復興するような均衡が選ばれ、復興が本当に成し遂げられたことが示唆されます。
このような集積の経済、複数均衡、および将来に関する期待の重要性は、戦争や災害後の復興や地域振興政策のような都市構造に影響を与える政策を考える上でこれらの要素を考慮する重要性を示しています。とりわけ、復興、発展させたい地域の将来に関して人々が楽観的な観測を持つことができるように働きかけることができれば、集積の経済が作用して本当にその地域の復興や発展が実現できる可能性が示唆されます。
本研究は、シンガポール国立大学Presidential Fellow(プロジェクト開始時はLondon School of Economics博士課程)の武田航平さんとの共同研究です。
Kishishita, D, Yamagishi, A, Matsumoto, T. 2022. "More Public Goods, Larger Government, and More Redistribution" (公共財を増やすと大きな政府が実現し、再分配が実現できる)
ここ40年ほど、(ピケティ等の研究が示唆する通り)アメリカをはじめとする先進国での経済格差の拡大が問題になっています。しかし、「だったら大きな政府にして格差を是正しろ!」という意見が増えているかというと必ずしもそうではなく、例えばアメリカでは政府による格差是正をやるべきだという意見は40年間ほとんど強まっておらず(例えば、Ashok, Kuziemko, Washington 2015)、結果的に大規模な政府の拡大は政治的に難しい状況のままです。どうして大きな政府への支持は高まらないのでしょうか?どうすれば高めることができるのでしょうか?
この論文では、「政府の拡大に人々が反対するのは、政府の活動で自分の生活が豊かになっていることに気が付いてないからではないか?」というとてもシンプルな仮説を検証しています。この仮説を確かめるため、Amazon mTurkというものを用いてアメリカでオンライン実験を実施しました。ランダムで選ばれた半分の人たちには、「アメリカ政府は道路や下水などにたくさんのお金を使っていて、みんなの生活を豊かにしている」という文章を読ませ、もう半分には特にそういう文章を読ませないでおきました。そしてそれから、「政府の拡大=増税に賛成ですか?」「税金はお金持ちから取るべきですか、それともみんなから取るべきですか」「税金は貧しい人のために使うべきですか、みんなのために使うべきですか」といった質問をして、格差是正に関する政治的な意見が、例の文章を読ませることでどのように変化するのかを調べました。
分析の結果、「大きな政府=増税への支持はぐんと高まる」けど、「税金を誰から取るか、だれに使うかについての意見はほとんど変わらない」ことがわかりました。これはつまり、政府の公共活動によるメリットを人々が認知すると、いまの政府をそのまま「拡大コピー」するのが良いと考えることになります。政府はすでに税金をより貧しい人に多く使っているので、もし拡大コピーができればより大規模な政策を実施でき格差の是正につながることになります。こうして、「政府がやっていることが自分の生活に役立っている気がしない」というのが増税への反対を招いているけれど、公共サービス等を充実させたりその周知に徹底することでこれを乗り越えれば大きな政府と格差是正が実現できることがわかりました。
論文ではさらに掘り下げて分析していますが、特に重要なのは上記のメカニズムは、党派性(民主党vs共和党)、所得、人種、性別、こういったものに関わらずみんなに有効であることがわかりました。政治的になにかを実現するにはみんなが賛成したほうがやりやすいので、これは上記のやり方が政治的にも受け入れられやすい可能性を示唆しています。また、これは少々専門的になりますが、公共経済学の最適課税論の分野では応能税の考え方を基本にしていますが、これはふつうの人が税について考える基準ではなく、応益税の考え方の方が一般的なのではないかという指摘が近年なされています(Weinzierl 2017)。この論文は、政府サイズについて考えるとき人々は応益税の考え方を適用しているという初の実験的なエビデンスにもなっています。
本研究は東京理科大学の岸下大樹さん、松本朋子さんとの共同研究です。